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“大人の遠足”で始める、仮設住宅と地域をつなぐコミュニティづくり【Cheer up! 陸前高田】

「仮設住宅に住む人が減り、取り残された気がして寂しい」「仮設住宅を出て新しい家に住み始めたものの、周りに知っている人もいなくて寂しい」そんな声を受けて陸前高田市小友町で始まった日帰りバスツアー“大人の遠足”

地域の人なら誰でも参加でき、仲間ができる、と大人気とのうわさを聞き、主催している“NPO法人 陸前たがだ八起プロジェクト”にお話を伺いました。

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被災している・していないにかかわらず、
みんな一緒に思い出づくり

東日本大震災から5年以上が経過した今も、陸前高田市内には2,080戸の仮設住宅が建ち、2,939人が暮らしています。(2016年3月時点)

そのうち、市内最大の仮設住宅団地がある“オートキャンプ場モビリア”には、168戸の住宅がありますが、自宅再建や災害公営住宅の入居が進み、いまは約半数の88世帯が暮らしています。

“NPO法人 陸前たがだ八起プロジェクト”は、震災直後からこの仮設住宅団地のサポートを行っています。今回はスタッフの池田陽一さんにお話を伺いました。
池田さんは鹿児島県出身で、岩手県が設立した“いわて定住・交流促進連絡協議会”から“いわて復興応援隊”として、陸前たがだ八起プロジェクトに配属されています。

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(団体の事務所が入っている、仮設住宅の集会所前にて)

現在、陸前たがだ八起プロジェクトでは、仮設住宅団地内に“ふれあい畑”を作り、住民同士の畑仕事を通した交流や、毎週1回“モビリアクラブ”という健康体操や運動を楽しむ会を開催しています。

「自宅再建を果たした方の中には、車が無く自由に出歩けずに、自宅にこもりがちな人も多くいます。和気あいあいとしていた仮設住宅の生活を懐かしむ声も聞かれるようになりました。

今後も仮設住宅の入居者が減る中で、これからは仮設住宅や自宅再建、もともとの地域住民などという枠組みにとらわれず、地域全体でコミュニティを作っていくことが必要です。」と池田さん。

そのためには、被災した人も被災していない人も、一緒に何かを体験し、思い出を共有することが重要だと思い、誰もが楽しめるバスツアーを企画したそうです。

2015年4月に第1回を実施し、その後は隔月で偶数月に開催。今年度は奇数月に開催して、2年間で12ヶ月分の、各地のイベントや、四季折々のお花を楽しむ計画です。

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(2016年5月の大人の遠足で訪れた、岩手県一関市の花と泉の公園にて)

老若男女が参加できる工夫が、
大人の遠足を成長させる

最初の大人の遠足の参加者は20名ほど。しかし、その後は参加した方からの口コミで応募が増え、今年5月に実施した際には50名を超えています。

開催する際には、回覧板で町内の全世帯にお知らせしています。参加者の年代は、小さなお子さんがいる家族連れから80代の高齢者まで幅広いそうです。
中でも、普段なかなか出歩けない高齢者が多く、全体の平均年齢は70歳前後。女性が多いですが、男性も3割ほど参加しています。

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(花と泉の公園にて、昼食に餅バイキングを楽しむ参加者たち)

毎回アンケートをお願いし、開催内容を改善しているのも、参加者が増え続けている理由のひとつ。男性参加者を増やすため、女性に人気のある「牧場での買い物&散策コース」と、男性に人気のある「ホテルでの温泉&休憩コース」から、好きな方を選べるようにするなど、ところどころに工夫が見られます。

参加した方々の声には、「久しぶりに外出ができて、ストレス発散になりました」「同じ災害公営住宅に暮らしている人と知り合うことができ、普段から挨拶をする関係になれました」と、新しい暮らしに良い影響を与えているよう。

また、「普段あまり人と話す機会がないので、ボケ防止にまた参加したい」という声がとても多く、危機感を自ら感じている高齢者の現状を、アンケートで目の当たりにすることになりました。

他の団体との連携と、
参加者同士のつながりが続くしくみづくり

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(回覧板で地域に配っている、大人の遠足参加者募集のチラシ)

大人の遠足の参加費用はなんと無料。旅行業者ではないため、法律上費用はいただけないそうです。そのため、ジョンソン・エンド・ジョンソンの助成により日本NPOセンターが実施する“市民・コミュニティのエンパワーメントプログラム”の支援を受けて開催しています。

このプログラムの目的は、東北の被災地域のコミュニティがエンパワーされる(力をつける)こと。東京の日本NPOセンターが現地のNPOと連携することで、地域にとって本当に必要とされることを一緒に実施する事業です。

また、震災直後から支援をしていただいている埼玉の“ReVA 復興ボランティアチーム 上尾”のボランティアの方々に、遠足当日に同行してもらい、参加者のサポートをしていただいています。

“ReVA 復興ボランティアチーム 上尾”のみなさんは、これまで何度もモビリア仮設住宅で活動を行っているので、住民の方々とも顔見知り。そのおかげで参加者のみなさんはリラックスした旅ができているそうです。

現在、陸前たがだ八起プロジェクトのスタッフは、池田さん含めて3名のみ。そのため、地域の声を市外の団体に届け、それぞれの得意な分野で連携することで、大人の遠足は運営されています。

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今後の活動について池田さんに尋ねると、「今はまだ、地域の人たちはお客様の状態。今後は企画段階から参加してもらって、みんなでつくる遠足にしていけたら、と考えています。」とのこと。

アンケートでも企画に参加してくれそうな人を探っていて、参加者から「◯◯に行く企画を立てたい」とアイディアも出始めているとか。「地域の人が自ら運営に参加することで、今後もつながりが続くしくみをつくることが目標」と、池田さんたちは奮闘しています。

地域に新しい風が吹く、きっかけづくりに

震災によりたくさんの住民がこの5年間で住居を変え、地域のコミュニティづくりが課題となっている陸前高田市。高齢化率も高く、地域の行事も継続が難しくなっています。

支援団体同士の連携が生んだ“大人の遠足”は、新しい暮らしに不安を抱く方々や、元々その土地に暮らし、新しい住民が増えて戸惑う方々が、互いの交流に一歩踏み出す機会になっています。

今後も地域に寄り添いながら活動を続ける陸前たがだ八起プロジェクトや、地域の方々たちの活躍に、注目していきたいと思います。

 

(参考リンク)
■ 陸前たがだ八起プロジェクト
・当サイト団体紹介ページ
http://rikuzentakata-mpf.org/nakamasyousai/03_rikuzentagada-hakki-project
・WEBサイト(外部リンク)
http://hakkiproject.com

■日本NPOセンター
・WEBサイト(外部リンク)
http://www.jnpoc.ne.jp/

■ ReVA 復興ボランティアチーム 上尾
・ 当サイト団体紹介ページ
http://rikuzentakata-mpf.org/nakamasyousai/24_reva
・ WEBサイト(外部リンク)
http://teamageo.exblog.jp/

カテゴリー: Cheer up! 陸前高田 






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