【CheerUp!陸前高田】仮設住宅への弁護士巡回活動
10月後半。氷上山の紅葉が鮮やかな陸前高田です。
秋が深まり冬への準備の季節ですね。
今月の「CheerUp!陸前高田」は、震災直後から現在も継続されている仮設住宅への巡回法律相談をご紹介します。
この仮設住宅弁護士巡回活動は、2011年4月、認定NPO難民支援協会(本部東京)が、復興には住民個々人の生活の基盤整備が重要と考え、在関東の有志の弁護士と協働して、住宅・生活再建のために避難所での「お悩みごと相談会」としてスタートしました。2012年7月からは現地の弁護士が活動主体となり、その後、陸前高田市の委託事業として継続されています。
現在は、いわて三陸ひまわり基金法律事務所(※)の在間弁護士や岩手県弁護士会が派遣する弁護士有志の方々が住民の相談に対応し、NPO法人まぁむたかたスタッフが同行サポートするなど、岩手県弁護士会・現地NPOとも連携して陸前高田市内および住田町の全仮設住宅50箇所を訪問して活動を続けています(平均週1回)。
この地域では、まず弁護士に相談することへの心理的なハードルも大きいことから、「法律相談」を前面に出すのではなく「お茶っこの中で悩み事を相談できる場」となるよう、工夫をされています。また、紙芝居を使って難解な制度を分かりやすく解説し、その後個別の相談や住民の質問に答えるという方法をとっています。
10月20日に開催した、まちづくりプラットフォームの支援連絡調整会議に、在間弁護士をゲストスピーカーとしてお招きし
「弁護士仮設住宅巡回活動から見えてくる、被災者の抱える問題の傾向と課題」と題して、講演を頂きました。
震災から4年と7か月。
自力再建や災害公営住宅への転居など、仮設住宅を出る方々が増えました。また、防災集団移転促進事業も各地区で進んでいるように感じます。一方、現在も今後の生活基盤整備や住宅再建の目途が建てられない方々もいます。巡回活動での質問や相談を見ると、震災直接起因に係る問題は、年度ごとに減少していてもゼロにはならず、時間が経っても解決していない現状であること、高台移転や住宅・生活再建に関する問題も、申請や最初のタイミングでの窓口とのコミュニケーションがとても重要になることを感じました。
相談傾向の分析から被災者の抱える課題・震災復興の法的課題にも触れ、中でも、支援制度の不均衡の是正として挙げられた私的整理ガイドラインの利用件数の少なさに関する部分では、「震災前のローンを抱えたままでは新たなローンを組むことができず自宅再建を断念する⇒被災沿岸部での賃貸住宅の共有不足⇒沿岸部からの人口流出」というサイクルに繋がってしまう点を改めて考えさせられました。
また、震災関連死の申請・認定状況では、福島・宮城に比べて岩手の申請および認定数の少なさが目立っている状況とその背景、申請して認められない場合、遺族が自分たちを責め、二重(家族を失う事と認められない事)に傷つけられることになるとのお話がありました。
「こうした制度の策定・運用をしていく上で、被災者一人ひとりを尊重しないと何が問題かは見えてこないが、現状では策定や運用が被災地から離れたところで行われていることが多い。これを現状にあったものに取り戻すには、私たちが一つひとつの声を届けていかないと変わらない。だからこそ、私たち現地にいる人たちの役割は大きい。それが今苦しみを抱えている方、将来の大災害で同じ苦しみを抱えてしまう方を助けることにつながる」との在間弁護士の言葉が印象に残りました。
これまでの活動では見えてこなかった、住民の法律的問題を具体的に話していただいたことで、今後の支援活動の中でも意識したい部分など、非常に学びの大きい講演でした。また、具体的な相談への対応事例などから、この活動が住民に寄り添って丁寧に問題解決に努めていることが伺えました。
会議の参加者からは、制度だけでなく「事業を現地NPOと一緒にやることのメリット」についても質問があり、在間弁護士から「周知、チラシ配布、会場設営など市や弁護士だけではできない部分を対応してもらえるし、弁護士だけでは固くなってしまう場の雰囲気を和らげてくれる。そして連携することでそれぞれの強みを活かし合えていることが一番大きい。」との回答がありました。
今後も、この連携の形で継続していくという巡回活動を応援、そしてまちづくりプラットフォームも情報交換していきたいと思います。
※いわて三陸ひまわり基金法律事務所は、陸前高田市内唯一の法律事務所です。
講演の中で法律相談窓口について共有されたリストを掲載します。